エクシア合同会社の怪しさとやばい結末

資金集めを合同会社の社員権でやる意味

2022年6月現在、出金停止中であり、4月の払戻率は0.2%と過去最大にやばい状況に陥っているエクシア合同会社。

5月末日には、3月に解約申請した投資家の一部に着金があったものの、入金がなかった投資家もいるようだ。

またこの日「かけるん」こと菊池翔は、恒例となったキャバクラでのインスタライブで強気の姿勢を崩さなかったものの、その後アカウントを削除。のち一時的に再開したりと、こちらも目が離せない。

解約を希望する投資家は相次ぎ、SNSやTwitterではエクシアへの批判・非難で荒れつつも異様な盛り上がりを見せている。

もともとエクシアがやばいと怪しまれる一つの理由に、合同会社で社員権を販売して資金を募る行為があった。

不特定多数からの投資を募るには、金融免許が必要なのは言うまでもない。

ところがエクシアは5000人以上の顧客から500億以上集めて、金融免許を保有していない。一言、やばい。

これは一体どういうことだろうか。

この問いの答えは、エクシアの合同会社という法人格にある。

エクシア合同会社は株式会社ではないので株は発行していない。かわりに合同会社の社員権を販売し、投資家はそれを購入することでエクシア合同会社に投資をすることになる。これは完全に合法だ。

なお社員権を購入するからと言って、エクシアの社員になるわけではない。あくまで形式上だ。

中身は株主・投資家と変わらない。合同会社では、定款で定めた者が会社の実権を握ることになり、株式会社と違い、出資額に応じて発言権が増すものではない。

合同会社において1万円出資しているAと、1000万円出資しているBがいても、定款上代表社員をAと定めれば、BはAの決定に逆らえなくなる。出資額と会社における発言力が比例していない点が合同会社の特徴といえる。

合同会社で出資を募るようになった背景

2000年初頭、当局に簡単な届け出さえすれば誰でもファンド組成が可能だった。

しかしそれに気づいた悪知恵の働く者が、この仕組みを悪用、詐欺が横行したため、これ以降ファンド組成はどんどん厳格化していく。

それでも「プロ向け」として「特例機関投資家等特例業務」という簡易的な届け出だけでファンドが組成できるやり方があった。これを援用することで、事実上ファンド運営は誰でもが可能だった。

2016年、これが厳格化。

参加する一般投資家の資産が3億円以上と決められ、ヘッジファンドなど独立系の資産運用会社が「一般の個人投資家」相手にファンドを組成する道筋が絶たれてしまったのだ。

このことで、一般投資家が、ヘッジファンドのような凝った投資手法を得意とする資産運用会社に投資する手段が日本でなくなってしまった。

しかしその後に、合同会社をファンド的に援用しようというアイデアが生まれる。

簡単にファンドを組成する法的要件がなくなると、合同会社をファンド的に活用する者が増えたのだ。

合同会社をファンド的に利用できると気づいた悪者もいて、かつてファンド詐欺が横行した時代と同様に合同会社を使って暗躍した。

苦情のタレコミが増えるたび、消費者庁では一般投資家に注意喚起をした。合同会社社員権での金集め業者に気を付けてくれと。

この当時、合同会社をファンド利用するのは違法ではないが脱法的だと世間的にも曖昧な印象があった。

そして2020年、合同会社で資金調達する行為に対して、はじめて司法の判断が下された。

それが合同会社GPJベンチャーキャピタル事件だ。

証券取引等監査委員会が、社員権を販売して一般投資家から投資を募っていた合同会社GPJベンチャーキャピタルに、金融商品取引法違反だとして、募集の停止を裁判所に求めたのだ。

まさにエクシア合同会社が現在採っている募集形式である。

申し立て内容は以下。

金融庁HPより引用した。

 

1.申立ての内容等
証券取引等監視委員会が、合同会社GPJベンチャーキャピタル(東京都中央区、法人番号7010003019930、代表社員 松橋知朗(まつはしともあき、以下「松橋」という。)、資本金8000万円、金融商品取引業の登録等はない。以下「当社」という。)に対して金融商品取引法(以下「金商法」という。)第187条第1項に基づく調査を行った結果、下記2.の事実が認められたことから、本日、証券取引等監視委員会は、金商法第192条第1項に基づき、東京地方裁判所に対し、当社並びに当社の代表社員である松橋及び当社の専務執行役員であり営業全般の総括責任者である渡邉貴文(以下「渡邉」といい、当社並びに松橋及び渡邉を併せて「当社ら」という。)を被申立人として、金商法違反行為(無登録で、金商法第2条第2項3号又は第5号若しくは第6号に掲げる権利について、募集又は私募の取扱いを業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行った。
令和2年3月13日

 

結論から言うと、裁判所は金融商品じゃないから訴えは無効とした。そのことで、証券取引等監視委員会が申し立てを取り下げた。

証券取引等監視委員会は9月にも、自分たちは申し立ての一部を取りやめたが、だからといって「社員権の取得勧誘が金融商品取引法違反に当たらないことを保証するものではなく、又、当該合同会社の社員権について何らの保証も与えるものではない。(原文ママ)」

との発表をしている。

しかし世間一般には「社員権による取得勧誘は合法である」と裁判所がお墨付きを与えたと見なすだろう。

合同会社はファンド組成するためにできたものではないが、現状、合同会社がなくなってしまったら、簡易にファンド組成をする方法がなくなってしまう。

となると、一般投資家が投資をする対象は、投資信託くらいしかなくなってしまい、つまらない金融商品だけになってしまう。

合同会社があったから、エクシアが生まれた。

エクシア設立当初の公式サイトでは、合同会社の社員権は、次世代型の投資スキームなどとうたっていたが、それまでも沢山の合同会社が社員権を販売しながらお金を集めていた。

エクシア合同会社がやばい!Xデイはいつ?

さて、話をエクシアの現在に戻そう。

2022年4月から投資家の解約に応じていない。

菊池翔氏はインスタライブにて、出金停止している事について聞かれ「どうも思わない」と言い放った。

エクシアなんてやばい
ポンジーに決まってる
 

そう言っていたアンチ層は、ほら見たことかとハイタッチをしているだろう。

事実、怪しさ満点だったエクシア合同会社。

そもそも菊池翔氏を含めエクシアの幹部は、金融業界において何の経験も経歴もない素人集団である。

たまたま時流にのって、返戻金という出資金の再分配の仕組みがハマって、金集めがとてつもなく上手くいった。

貯めこんだ資金で2019年以降は総合金融サービスを目指し企業買収を手掛けた。

 

 

しかしその後、事業の成果の報告はなく、かけるんのキャバクラ豪遊だけが目立った。

出金停止後あたりから打ち出されたのは、エクシアレルム(王国)。

800人以上のエクシア投資家と業務委託契約を締結しサインをした投資家はエクシアの「新たな営業マン」になった。

菊池翔氏によれば、六本木にある1000坪のオフィスは、このエクシアレルム構想を具現化するためであったらしい。

・・・かけるん、やばいぞ(笑)

ともかく、今後奇跡が起きない限り、エクシアの現・投資家の諦念マインド、解約ラッシュの流れは収まりそうもない。

果たしてエクシアはいつまでもつのだろうか。

オープンチャットはじめSNSでは

既にお金は尽きた
あと数か月で飛ぶ
関西コレクションまでは生きながらえる

 

など様々な憶測が飛び交っているが、筆者の調べた情報を精査すると、年内倒産はないと考える。

ただし、現実的に再生の道がかなり厳しいことや、新規で出資を受けることが容易ではないことを考えると、

・投資家の出資金を著しく棄損しながらも、詫びて返金する

これが最善で唯一の手ではないだろうか。

今一度いうが、合同会社が社員権を自ら販売して、出資を募ることは違法ではない。

しかしエクシアが倒産や破綻となれば、被害者も数千人規模、被害総額も数百億にのぼる。

社会問題になることは間違いなく、そうなれば合同会社自体の存続も危ぶまれるだろう。

筆者としては、それだけは避けたい。

なぜなら、この合同会社への出資という行為こそが、個人投資家にとって唯一、戦略的な金融商品を購入することのできるルートだからだ。

通常、個人の投資家には美味しい金融商品はあてがわれない。

投資信託は簡単に買えるが、手数料が高くパフォーマンスも低い。

ヘッジファンドの金融商品となると最低投資金が1億や2億円からだ。そうなると数百万円までを投資サイズにしている個人投資家は手も足も出ない。

ただし金融のプロフェッショナルがもし個人投資家からも出資を受けようと思ったなら、合同会社を組成して営業をする可能性がある。そうすれば我々個人投資家は投資が可能だ。

エクシアは荒唐無稽だったが、返礼率には夢があった。

エクシアの結末を見る前に過去形で言い切ってしまうのは問題だが、何が言いたいかと言うと、合同会社を通じ、本物のファンドに巡り合える可能性があるということだ。

仮にエクシアが事件化し合同会社という枠組みが解体されてしまうとする。

そうなると個人投資家はいよいよアグレッシブだったりハイパフォーマンスな金融商品への選択肢を失ってしまうのだ。

社員権の販売を通じて出資を募っている資産運用会社は、エクシアだけではなく、他にも多数存在する。

私自身、貯金の七割を投じているBMキャピタルもそうだ。

こちらは派手なパフォーマンスはないが、年間10%程度のリターンを8年以上続けてくれている。

このように、長期にわたって資産運用をし続けてくれるBMキャピタルのようなファンドも存在する。

合同会社というシステムは悪くない。どこまでいってもその使い手の問題なのだ。

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